2009年12月16日 (水)

千里伝 五嶽真形図

 仁木英之著「千里伝 五嶽真形図」を読みました。千里は、9世紀・唐の後期の人物で、武勇の士であり、詩人でもあったそうです。これは、彼の幼き頃の物語。

 中国の伝説では、西王母が天地を創造し、五嶽真形図が万物を繋ぎとめたのだそうです。人は種の争いを勝ち、天地に広がったが、五嶽真形図に選ばれてはいません。漢の武帝が一度それを手にしましたが、やはり図に認められることはありませんでした。
 それから千年の時が経ち、また図は動き始めました。戦場に妖しい者たちが現れるようになってきた。人頭体馬、馬頭体人、翼のある人、頭が二つある人等など。
 高承簡は、戦場で翼を持つ娘・紅葉に助けられ、紅葉を妻とした。紅葉は、双子の子供を産んだが、一人は亡くなり、もう一人は千里と名付けられた。千里は成長して18歳になったが、体は5歳の幼児のまま。だが、力は強く、武術も得意である。
 ある日、紅葉はどこかへさらわれ、高承簡も妻を追っていなくなってしまった。千里は父と母を捜す旅に出る。だが、その旅は五嶽真形図を得る旅でもあった。父と母を連れ去ったのは、妖人たち。彼らは、人に負けて天地から追い払われたが、虚空に世界を創り、生き延びてきた。そして今、五嶽真形図を得て、天地を自分達の物にしようとしていた。
 千里の連れは、吐蕃人のバソンと僧の絶海。対する相手は、玄冥(千里の死んだ兄)、怪力の少女・蔑収と句芒。
 五嶽真形図に選ばれる器は、千里かまたは玄冥か?。

 荒唐無稽な物語です。現実味は全然無い。さすが中国、妄想も広大になるなーという感じです。
 千里の出自や武力の話もおもしろいのですが、吐藩人のバソンや僧の絶海もなかなか興味ある人物像でした。バソンは根っからの狩人で、自然の中に生きており、愛妻ピキを想う気持ちは誰にも負けない。僧の絶海は、少林寺で鍛錬した超絶な体力を持っている。だが、内力(精神?)が分かっていないので、真の力を発揮できないでいる。
 玄冥は、一度死んでいるが、妖人の王・共工に助けられ、五嶽真形図の器となるべく修行を積んでいた。彼は、自分と違う世界にいる父母と千里を妬み恨んでいた。

 私達の世界は、未だに戦争があり、人同士でさえ理解しあえないでいます。紅葉の願いは、人と妖人の”人”が一緒に暮らせる世界。だが、地球上では同じ人類どうしでさえ、国や民俗、宗教が違うだけで争っている。自分と違うものを排除する、そういう気持ちを無くし、どんな人であろうと相手を認め尊重しあえる、そんな世界を私たちは創れるのでしょうか。最後に千里は、人類はそれを目指すと言うのですが、難しいなーと想います。

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2009年12月 3日 (木)

イマジン

 清水義範著「イマジン」を読みました。一言で言うと、タイムスリップものです。

 沢口翔悟は、大学に落ちて一浪していたが、翌年受験を止めて放送クリエーター学院に入学した。だが、パソコンソフトの開発会社社長の父・大輔は、息子のそんな生き方に失望しており、父子の仲は最悪になっていた。翔悟は家を出て、今は母親が借りてくれたワンルーム・マンションに住んでいる。だが、放送クリエーター学院の授業も翔悟が期待していたようなものではなく、翔悟は今無性にイラついていた。
 そんな時、ひょんなことから、翔悟はタイムスリップをしてしまった。扉の向こうは、23年前の世界。未だ翔悟は生まれていない。金も住む処も無く、頼れるのは?。翔悟は若い頃の父親が住んでいたアパートを知っていた。一度連れて行ってもらったことがあるのだ。そこへ行ってうろうろしていると、酔っ払った大輔が帰ってきた。階段で転んで怪我をしているのを介抱して、一緒に部屋に入り、なんとなく話を合わせて世話になることになってしまった。
 23年前の大輔は翔悟が知っている父親とは少し違って、会社勤めもうまくいかず悩んでいた。その頃はパソコンの黎明期。大輔はその後、親友と組んで会社を興すのだ。
 翔悟は、大輔と組んでパソコンについての知識をソ連のスパイに売って金を儲けたり、大輔の親友が恋人と知り合うのを助けたり、アメリカに行ってジョン・レノンが殺されるのを阻止しようとしたりした。そして・・・・・。

 時間旅行をして、自分が生まれる前の親に会うというテーマは、バックツーザフューチャーにもありました。この小説でもちらっとそれに触れています。翔悟は、父親が母親以外の女性に恋をするのを邪魔したり、若き母親の姿もちらっと見たり。
 でも、この小説ではそれが目的ではなく、人の生き方や考え方が主眼です。
 大輔も若い頃は、自分の生き方に悩んでいた。有名大学を卒業し、最先端のパソコン技術を身につけているはずなのに、自分が作ったソフトはうまく動かず、会社では認められていない。酒を飲んで、「あんな会社、辞めてやる!。」とうだをあげていたのだ。
 それは、今の翔悟の姿にも重なる。翔悟は、そんな父を見て、親近感を覚え、ああ父親ってこんな熱くていい男だったのだ、と思うのだ。

 私は、自分の父が好きだ。だが、尊敬すると思えるようになったのは、やはり仕事するようになってからだと思う。長く同じ仕事を続けていると、嫌になったり辞めてやろうと思うことが、一度や二度はあるものだ。そんな時、ふと父のことを思った。あの人は40年間、ずーっと私達のために働いてきてくれたのだなっと。
 大輔が自分の生き方に自信を持ったように、翔悟もきっと自分のやりたい仕事を見つけていくのだろうな。

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2009年11月21日 (土)

派遣村、その後

 昨年の年末から正月にかけて、東京の日比谷公園にあった「年越し派遣村」の映像は衝撃的でした。テレビニュースや新聞でそれを見て、いったいどうなっているんだ?と思ったのは、私だけではないだろう。ついには、厚生省や東京都も動き出し、公的な施設への宿泊を斡旋したり、生活保護需給への動きにもなった。
 しかし彼らに対して、甘えている、働いている時になぜ貯金をしておかなかったのか、求人はあるのに仕事の選り好みをしている、働く気が無く生活保護に頼ろうとしている、という批判も多い。
 実は、私も半分そう思っている。自分は、きちんと働いて貯金もしてきた、だからこそ病気になっても自立して生活をしている、という自負があるから。
 でも、最近のワーキングプアのことや貧困問題は、とても気にかかる。だから、図書館でこの本を見つけた時、つい手が伸びて借りてきてしまった。

   「派遣村、その後」 編集・小川朋 協力・「年越し派遣村」実行委員会
 『第1章 「派遣村」は続いている』では、今年の春に群馬県前橋市で行なわれた「ぐんま派遣村」の様子とそこにやってきた人たちの話や、年越し派遣村にやってきた人たちの職歴や生活について書かれていました。
 『第2章 道筋をつけるーハケンから直接雇用へ』では、生産現場における派遣労働や偽装請負の仕組み、そして、労働組合に入り組織的に闘うことによって雇用を守っていった事例、について書かれていました。
 『第3章 これからー社会に問われているもの』では大会社の経営の仕組みや日本の貧困率、今後の雇用のあり方に対する提言などが書かれていました。

 読んでいて思ったのは、第1章で語られている人たちの話と第2章の労働運動の間には大きな開きがあって、なんか納得がいかないのです。
 派遣村に来た人たちは、きちんと働いて自分達の権利を守るために闘ってきたのだろうか?という疑問。それに対する答えが無い。派遣村に来た人たちのその後については、相談員やボランティアの方達と一緒に市役所へ行って生活保護の手続きをした、で終わっています。そして、第2章で語られている組合活動や労働運動をやっている人たちは、派遣村には来ていません。そこに書かれていることは、日本共産党の主張によく似ていました。
 年越し派遣村の実行委員会は、6月30日で解散しました。ネットで関連記事を見てみたら、7月13日の産経ニュースでは、”解散を前にした6月末、実行委がまとめた村民アンケート結果では、村の登録者は630人。そのうち実行委が住所を把握しているのは260人で、回答を寄せたのは108人。就労確認された人は、わずか13人。”と書かれていました。
 私のもやもやは、やっぱり晴れません。あれは、いったい何だったのだろう。しかし、今年もあと1月あまりで年末です。景気が良くなっている兆しはありません。今年の年末はどうなるのでしょうか?。

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2009年11月16日 (月)

フェイク・ゲーム

 阿川大樹の「フェイク・ゲーム」を読みました。ここには、2人の女が出てきます。
 一人は、高岡麗美。父は海外の駐在員で、上海で生まれ、シンガポール、香港と海外を点々として成長した。しかし、母は海外駐在に嫌気が差し、日本に戻った段階で父と離婚した。大学生になった麗美は、父に卒業までということで学費と生活費を出してもらっていた。
 もう一人は、西山律子。飲み屋「酔い呑」でバイトをしていたが、今は止めてキャバ嬢をしている。足裏マッサージの店でも働いている。

 2人の人生は、何の関係も無かったはずだった。だが、金儲けのために2人がとった行動が、2人の人生を交差させた。
 金を儲けるには、自分で働くより他人に働かせて上前を撥ねた方が、ずーっと効率が良い。2人ともそれに気が付いたのだ。
 高岡麗美は、暴力団の首領の愛人という名目で、ヤクザのビジネスに乗り出した。恋愛関係は無いが、愛人とした方が命令を出すには都合が良く、対外的にも便利なためだ。麗美は、中国人リーメイと名乗ることにした。
 彼女が始めたビジネスは、中国から人を集め、日本語学校に入学させて、就学ビザで働かせること。アパート、学校、勤務先、全てで中国人を囲い込み、それぞれ金にする。
 西山律子の本名は、シャメイ。彼女は実は中国の片田舎で生まれ、親兄弟を亡くして上海にやってきた。そこで日本語を覚え、金を稼ぐために日本へやってきた。ある日、自分によく似た女の免許証を拾ったことから、日本人になりすますことを覚えた。そして、その方法を同胞に売る、というビジネスを始めたのだった。

 この本では、新聞やテレビで見たことはあっても、実際には全然知らない世界のことがいろいろ書かれていました。
 ヤクザ、あるいは暴力団は、経済組織である。彼らの目的は金を儲けること。そのために必要なら非合法なこともするが、犯罪が目的なのではない。普通より収益が高いビジネスが目的なのである。一般社会では落ちこぼれるような人間にも、高所得が得られることが大事なのである。
 これって、ちょっと目から鱗です。私達の社会は、確かにはじき出している人間が存在することを、私も少しは知っている。
 そして、不法滞在や不法就労の外国人の問題。以前やはり中国から日本語学校へやってきて、そこを抜け出して東京で働いて、家族に金を送っていた人の話をテレビで見たことがあります。また、企業で中国人研修生が安い時給で働かされていたという話も、新聞で読みました。
 欲望、金を儲けること。たぶん、それは、私とは無縁の世界。だが、物語を読むのはおもしろい。

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2009年11月 6日 (金)

スターウォーズ 悪の迷宮

 古本屋で買ってきたスターウォーズシリーズの3冊目。今のところ、これで最後。また、いつかシリーズの本に出会う時があるかなー。

 この「悪の迷宮」は、映画エピソード2「クローンの攻撃」から3年後。この本の次が、映画エピソード3「シスの復讐」です。このエピソード3で、アナキン・スカイウォーカーはダークサイドに転落するわけですが、この物語はその前の段階。

 ケイト・ニモーディアで、オビ=ワンとアナキンは戦っていた。ここの支配者ヌート・ガンレイは分離主義者で、13年前にナブーを封鎖した男である。ガンレイは2人に追い詰められ、あわてて宇宙船でアウター・リムへと逃げ出した。その際にシス卿・シディアスからの通信を受け取るメクノ=チェアを宇宙港に置き忘れてしまった。
 アナキンとオビ=ワンは、メクノ=チェアの秘密を探るために、それを作った工場惑星シ・チャーへと飛んだ。そこで、次は椅子を運んだパイロットのことを知り、採鉱惑星エスカートへ。パイロットは死に、次の手がかりはドゥークー伯爵が居るというネオスIIIへ。
 だが、二人が辺境の星を捜索している間に、首都コルサントはグリーヴァス将軍の攻撃を受けた。爆撃で崩壊する建物、そしてパルパティーン議長に誘拐の手がかかった・・・・。

 この物語では、シスが共和国政府の上層部に潜入していたことが明らかになった。シスはコルサントにも自由に出入りをしていたのだ。
 また、アナキンの強さにも言及している。普通、ジェダイは生後すぐにジェダイテンプルに送られる。自分の両親も知らず、感情を抑えてフォースの力を強めるよう教育される。だが、アナキンがジェダイに見出されたのは、9歳の時。もう十分に感情は育っていた。怒りの感情、それがフォースの力を強め、戦いに勝つ要素となる。だが、あまりにその感情が強くなると、それはダークサイドを呼ぶ。
 ダークサイドとは、人間の負の感情から発しているのだ。そして人は誰でも、正なるものと負になるものの両方の感情を持っている。

 映画では、勧善懲悪が強調され、共和国は正義で分離主義勢力は悪とされていた。だが、世の中はそんなに簡単に割り切れるものではない。
 共和国政府に不正とされた惑星は、罰金と賠償金を負わされて衰えていった。そんな惑星を救おうと、分離主義勢力の軍隊に入ったグリーヴァス。また、共和国の規定に縛られない自由な貿易をしたいと望む多数の惑星。分離主義勢力は、そんな人々にも支えられていた。
 正義というのは、簡単なものではない。それは、ジェダイも同じ。

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2009年10月 7日 (水)

スメラギの国

 朱川湊人著「スメラギの国」を読みました。
0910nana31_2  表紙に猫の絵が描かれていたので、猫好きの私向きかもと思って借りてきたのですが、ちょっと読むには辛い物語でした。表紙の猫の絵、よく見るとやっぱり不気味かなー。

 香坂士郎は、幸せだった。会社の寮を出て、新しく家を借りた。そこは、恋人の麗子と一緒に暮らす予定で、二人で見立てた部屋だった。その部屋に、野良猫のジンゴローとヨアヒムがやってきた。猫好きの麗子に言われ、士郎もついつい猫に餌をやって、部屋に入り込ませていた。
 士郎が住むアパートの前には、道を隔てて広い空き地がある。そこは、以前アパートの大家さんの別宅があったところだが、火事になってそのままになっている。その草ぼうぼうの空き地で、士郎は白いきれいな猫の親子を見た。士郎は、親猫をスメラギ、子猫をプリンスと名付けた。
 士郎が車を買い、その空き地の一画を駐車場代わりに使わせてもらうことになった時、悲劇は起きた。夜遅く、車を空き地に入れようとした際に、誤って白い子猫・プリンスを轢いてしまったのだ。
 その日以来、士郎は猫に襲われるようになった。猫は、士郎を見ると、集団になって襲い掛かってくる。背中に飛びつき、引っかき、体を駆け上って喉を狙う。家に帰るのも危ない。遂には、ヨアヒムまで部屋の中で士郎を襲い、士郎はヨアヒムを殺してしまった。士郎の車には猫が飛び込んでくるようになり、そして麗子が・・・・。

 猫が士郎を襲い、士郎が自衛のためとはいえ猫を殺していく場面は読むに耐えなかった。この作者は、よほどの猫嫌いかと思ったほどだ。
 だが、スメラギは猫では無かった。猫によく似ているが、”ひゅん”という妖獣で、猫たちに知恵を与えていたのだった。スメラギにその気は無かったのだが、知恵を持った猫たちは、集団で行動することや復讐することも憶えてしまったのだった。
 最後は、スメラギと士郎の心が交差して、お互いの哀しみを知った。愛する者を失った哀しみ、それは獣も人間も同じなのだ。

 私も猫好きだ。でも、猫って何を考えているのか、よく分からないなと思うことも多い。気まぐれで、自分勝手。気に入らないことはしないし。野生も残っていて、虫やネズミも捕まえてくる。残酷だなっと思うときもある。
 今も私の隣で寝ているナナちゃん、やはりこの猫がいてくれて私は癒されているなっと思う。この物語も、最後は猫のチョコが、自分を拾って育ててくれたお婆さんのところへ戻っていく。やはり、猫は人間の友達だ。一緒に暮らす仲間。

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2009年9月28日 (月)

タロットの迷宮

 小笠原慧著「タロットの迷宮」を読みました。著者の小笠原慧は、精神科医で、この本でも精神科のいろいろな症状や治療法が出てきます。

 近未来。日本の治安は悪化しており、金持ちは居住を首都圏から田舎へと移しかけていた。首都圏の食糧事情も、少しずつ悪くなりかけている。
 そんな時、警視庁捜査支援室所属の麻生利津は、自身が手がけた巨大非合法ビジネスの主犯逮捕事件の結果、身に危険が及ぶ可能性がでてきた。それを避けるため、身分を偽り、犯罪者の医療観察施設に心理療法士として潜入することになった。実は、その施設では女医が一人収容者に殺害されており、その事件を探るためにも内部での調査が必要になっていたのである。
 殺害された女医の胸には、タロットカードの大アルカナ・『運命の輪』が逆向きに留められていた。
 麻生利津が、施設内部を探っていく内に、事件に関係したと思われる人物が次々に殺害されていく。遺体を発見した看護士・丸野は、屋上から飛び降りた。警察には自殺とされたが、利津の部屋のドアにはタロットカードの『吊るされた男』が逆向きに貼られていた。保安課の春田には、『愚者』カード。そして、次は・・・。
 病院の医師たちの中にも、確執があった。外科的な治療を最善とするグループと行動療法や薬物療法を基本とするグループ。医師の中には、治療よりも学会での発表のための資料を得るのが目的の者もいる。医師や職員の間では、精神医療に飽き足らず、占いやカードに興味を持つ者も何人かいた。
 女医はなぜ殺されたのか?、タロットカードは、何を意味しているのか?。

 現在、少しずつ脳細胞の働きについて分かってきた。音楽を聞いたとき、考えているとき、脳のどの細胞が活性化しているのかとか、脳のどの部分が体のどこを動かしているのか等々。だが、人間の精神については、未だ未だ分からないことがたくさんある。精神的な病気についても、治療法はいろいろ提案されているが、未だ絶対というものは現れていない。
 この物語では、タロットカードが重要な役割を果たす。だが、そもそも犯罪者は、完全犯罪を望むはずなのに、なぜ現場に重要なヒントを残すのか?。それは、犯罪を知られたくないという気持ちと、自分がこれをやったと誇示したい気持ちの葛藤のゆえだと。すごいことをやったと誰かに自慢したい。推理小説に出てくる犯罪者が、必ず足跡を残すのは、そのためらしいのだけど、現実の事件ではどうなんだろう?。
 この本は、以前書かれた別の本の続きになっているが、これだけ読んでもけっこうおもしろかった。この前の物語も、機会があったら読んでみたいと思う。

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2009年9月21日 (月)

デンデラ

 佐藤友哉著 「デンデラ」 を読みました。すごい話です。何と言っても”姥捨て山”のその後なのですから。姥捨て山に捨てられた老女は、その後どうなったか?黙って死んでいった、とんでもない、ちゃーんと生き延びて村に復讐を図っているのです。あな、おそろしや。

 斉藤カユは70歳になったので、息子に背負われて『お山』に捨てられました。白装束を着て『お山参り』をすれば、極楽浄土に行けるはずだったのですが・・・・。なぜか、夜中に女の人の声がして、翌朝目が覚めると、ほったて小屋のような家の中で藁に包まれて寝ていました。
 そこはデンデラでした。デンデラは、やはり山に捨てられた三ツ屋メイが30年前に造った村で、山に捨てられた老女だけを拾って人口を増やし、畑を耕したり山で小動物を捕ったりして生き延びていました。
 三ツ屋メイの目的は、ただ一つ。自分を捨てた村が憎い。人口を増やし、武器を使う訓練をして、いつか村を襲撃する!。だが、デンデラに住む老婆達の考えは、一様ではなかった。三ツ屋メイを長とする襲撃派に対して、村の存続と安定のみを目的とする穏健派が存在していた。
 そんな時、大変な事態が起こった。今年は村は不作だった。そして、山も不作だったため、冬ごもりができない熊が居たのだ。その雌熊は、昨年産んだ小熊を連れており、デンデラの倉庫を襲って、食料と共に人肉の味を覚えた。デンデラの老婆たちは、知恵を絞って熊の襲撃に立ち向かい、小熊を倒すことができた。小熊の肉を食べ、喜びに沸いていた村。だが数日後、疫病が始まった。血を吐いて倒れる老婆達。
 親熊は未だ生きている。そして疫病。デンデラは、どうなるのか?。そして、村は?。

 いやー、すごい。さすが、70年以上生きている老婆たち。転んでもただでは起きぬ根性の持ち主ばかり。まあ、昔の老婆がこんなに元気かどうかはともかく、今の老人ならできそうだ。ウォーキングに行っても、私より速くさっさと歩いていく老人がけっこういて、年を聞いてみると70過ぎという人も多い。75歳でエベレストに登頂した三浦雄一郎もいるし。今時の若者、絶対に負けると思うな。
 デンデラに来た女たちは、今まで考えたことがない自分の生き方について考えることになる。襲撃派にせよ穏健派にせよ、何のために生きるかということを突きつけられるのだ。死ぬつもりだったのが、死ねなかった女たちの生き様。考えさせられます。

 岩手県遠野市にはデンデラ野という場所があり、昔60歳になった老人を捨てた場所だとも言われています。

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2009年9月19日 (土)

スターウォーズ 暗黒の会合

 「スターウォーズ 暗黒の会合」を読みました。これも 「スターウォーズ 破砕点上」「破砕点 下」 と同じく、「エピソード2 クローンの攻撃」の後の物語です。

 エピソード2から30ヵ月後。共和国と分離主義者との戦いは熾烈を極め、戦線はどんどん広がっていった。数少ないジェダイは戦いに駆り出され、ジェダイテンプルで子供たちを教える教師の数も少なくなっていた。 
 そんな時、分離主義者のリーダー、ドゥークー伯爵からジェダイの長老・ヨーダに私信が届いた。ヨーダの弟子だった時の思い出の品を送り、ヨーダに会いたいと。これは罠か?、それとも停戦への手がかりか?。
 ドゥークー伯爵は今、惑星ヴィジョンに居た。ヴィジョンもまたフォースが強い土地で、その力がいつしか狂気を産み、住民のほとんどが殺されたり自殺したりしていなくなっていた。
 ヨーダは、2人のジェダイと2人の若いパダワンを連れて、惑星ヴィジョンへと旅立った。2人のパダワンは、未だジェダイテンプルの生徒で、13歳の少年・ウィーと14歳の少女・スカウト。ウィーは、惑星ヴィジョンでドゥークー伯爵が住んでいるマルロー屋敷の子孫だった。
 果たして、ヨーダとドゥークー伯爵の会合は、無事行なわれるのか?、そして結果は?。

 今回の話は、映画の本編と連続しています。
 映画に出てきた、緑の小柄な老ジェダイ・ヨーダ。彼の活躍はなかなかのもの。800年も生きている老人?だが、ライトセーバーの腕はたつし、そのフォースの力は強い。彼は、どんなダークサイドの誘惑にも屈しない。
 今回はそういった美点だけでなく、ちょっと笑えるエピソードもいろいろ。まず、食事の好み。どうも私達ヒューマノイドとはかなり違っているらしく、泥沼を煮込んだようなものが好き。お腹が空いていると、とっても不機嫌になる。今回の旅では、隠密に出かける必要があるため、なんとR2型ドロイド(丸いブリキ缶のような形)の中に入って、ロボットのふりをする。これが、こそっと変なことをやったりするのよね。
 オビ=ワン・ケノービやアナキン・スカイウォーカー、パドメ・アミダラもちょっとだけ出てきます。

 ジェダイは、共和国全ての人々から信頼されているわけではない。それどころか、子供の誘拐者として忌み嫌われている部分も合わせ持っている。ジェダイになるためには、フォースを感じる才能を持つ子供たちを、幼い頃から訓練しなければならない。
 ドゥークー伯爵は、いみじくも言った。ジェダイになるのは、親にお前はいらないと言われた子供たちだと。それでもスカウトは言う。私はジェダイについていくと。ウィーも母親に会うが、やはりジェダイへの道を選んだ。

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2009年9月 6日 (日)

苦情こそ我が人生

 関名ひろい著 「窓口職員奮闘記 苦情こそ我が人生」 を読みました。

 山口直哉は、市役所の住民課勤務で南出張所に来て10年、そろそろ定年退職である。南出張所には、所長・桜田咲子(50代)、斉藤松五郎(50代)、岸部マリ子(20代)の4人の職員がいる。
 住民は毎日、いろいろなことで出張所へやってくる。所得税や住民税の支払い、婚姻届や離婚届、出生届けに死亡届、戸籍謄本や住民票、国民年金の支払いや国民健康保険、印鑑登録、等々、役所の仕事はけっこう多岐に渡る。しかも届け用紙がそれぞれ違い、書き方も面倒。いろいろな条例に使われている役所言葉が、また分かりにくい。それを住民にきちんと説明し、手早く処理するのは、なかなか大変。身勝手な住民に振り回されたり、時には職員の手違いも。

 というわけで、役所の窓口は苦情の山。市長を出せと怒鳴る住民もいれば、役所に投書する住民もいる。本庁の課長や部長は、保身が大事。これまた何かといえば窓口のせいにしたがるのだ。
 私も公務員の端くれだったこともあるので、この辺りの事情はとってもよく分かる。出世大事な人間は、絶対に責任を取ったりしない。手柄は自分のものに、失策は部下のせい。大過なく、上にへつらう人間の方が出世する。
 だが、出世しなくていいと思えば、これほど楽な居場所も無い。8時半から17時半まできちんと働いて、きちんと帰る。休みもしっかり取れるし、身分は保証されている。窓口業務が自分に合っており、住民のためになっているという自負があれば、出世の必要は無い。上にいっても、楽しい仕事があるとは思えないからだ。

 山口は、窓口業務が好きだった。確かに苦情も多く、大変なことも多い。だが、住民に感謝されることもあり、そういう時には今までの苦労が報われると感じる。
 戸籍にまつわる話では、いろいろな事例があった。パスポートを取るために戸籍を見て、初めて自分が養女だと知った話。ストーカーや家庭内暴力で逃げてきた人の住民票をどうするか。印鑑登録に三文判を使ったばかりにサラ金被害にあった話。
 いろいろな事例で、つい親身になって相談に乗る内に、住民の人生を垣間見ることになっていく。ほんとうに役所というのも、悲喜こもごもの人生が凝集される場所だなと思う。

 最後に著書プロフィールを見たら、やはり市役所の窓口業務に携わって、定年退職したと書かれていた。フィクションとあるが、かなり経験に基づいた内容のようである。

 お知らせ:明日・明後日と留守にします。帰ってきたら、また書きますね。

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