千里伝 五嶽真形図
仁木英之著「千里伝 五嶽真形図」を読みました。千里は、9世紀・唐の後期の人物で、武勇の士であり、詩人でもあったそうです。これは、彼の幼き頃の物語。
中国の伝説では、西王母が天地を創造し、五嶽真形図が万物を繋ぎとめたのだそうです。人は種の争いを勝ち、天地に広がったが、五嶽真形図に選ばれてはいません。漢の武帝が一度それを手にしましたが、やはり図に認められることはありませんでした。
それから千年の時が経ち、また図は動き始めました。戦場に妖しい者たちが現れるようになってきた。人頭体馬、馬頭体人、翼のある人、頭が二つある人等など。
高承簡は、戦場で翼を持つ娘・紅葉に助けられ、紅葉を妻とした。紅葉は、双子の子供を産んだが、一人は亡くなり、もう一人は千里と名付けられた。千里は成長して18歳になったが、体は5歳の幼児のまま。だが、力は強く、武術も得意である。
ある日、紅葉はどこかへさらわれ、高承簡も妻を追っていなくなってしまった。千里は父と母を捜す旅に出る。だが、その旅は五嶽真形図を得る旅でもあった。父と母を連れ去ったのは、妖人たち。彼らは、人に負けて天地から追い払われたが、虚空に世界を創り、生き延びてきた。そして今、五嶽真形図を得て、天地を自分達の物にしようとしていた。
千里の連れは、吐蕃人のバソンと僧の絶海。対する相手は、玄冥(千里の死んだ兄)、怪力の少女・蔑収と句芒。
五嶽真形図に選ばれる器は、千里かまたは玄冥か?。
荒唐無稽な物語です。現実味は全然無い。さすが中国、妄想も広大になるなーという感じです。
千里の出自や武力の話もおもしろいのですが、吐藩人のバソンや僧の絶海もなかなか興味ある人物像でした。バソンは根っからの狩人で、自然の中に生きており、愛妻ピキを想う気持ちは誰にも負けない。僧の絶海は、少林寺で鍛錬した超絶な体力を持っている。だが、内力(精神?)が分かっていないので、真の力を発揮できないでいる。
玄冥は、一度死んでいるが、妖人の王・共工に助けられ、五嶽真形図の器となるべく修行を積んでいた。彼は、自分と違う世界にいる父母と千里を妬み恨んでいた。
私達の世界は、未だに戦争があり、人同士でさえ理解しあえないでいます。紅葉の願いは、人と妖人の”人”が一緒に暮らせる世界。だが、地球上では同じ人類どうしでさえ、国や民俗、宗教が違うだけで争っている。自分と違うものを排除する、そういう気持ちを無くし、どんな人であろうと相手を認め尊重しあえる、そんな世界を私たちは創れるのでしょうか。最後に千里は、人類はそれを目指すと言うのですが、難しいなーと想います。
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